他人を責めているうちは治らない・学べない理由

トレーナーの羽利です。

3月末に向けて、立て続けに個人レッスンを終えていく方がいらっしゃいます。

コロナ禍の中、ご自身が望んでいた結果をしっかりと出された方もいて、毎度サポートさせていただく私の方が励みになっていました。

先日、「Q&A形式でお答えします:自己洞察瞑想療法でうつ・不安障害が治る人はどういうふうに実践していますか?」という記事の中で、自己洞察瞑想療法でよくなる方の実践の特徴を書きました。

今日は、自己洞察瞑想法でなかなかよくならない方の傾向について書いてみます。

人を責めるって意外と気持ちいい!?

自己洞察瞑想法に取り組みながら、症状の好転が遅れる人の特徴の中に、その方が問題を感じている「他人」の話ばかりするという特徴があります。

不快な感情や思考を膨らませてしまう特定思考や言動があって、それをコントロールできないことが1つの症状なのですから、ごく自然な流れです。

配偶者が、子供が、父母が、義父母が、上司が、同僚が、部下が、隣の家の人が、ママ友が・・・

一度、火がつくと止まらない・・・
もう誰かに聞いてもらいたくて、聞いてもらいたくって、しょうがないですよね・・・
愚痴のひとつも言いたくなりますよね・・・

でも、これ続けている限り、症状は劇的にはよくなりません。

2つの矛盾するメッセージ

皆さんは、他人を責める話をしたりしている時、不快な反面、ちょっとした高揚感を得たりもしませんか?

(私にもありますよ、以前ほどではないですが)

他人を責める悪口を発している時、私たちの脳内にはドーパミンという脳内物質(ワクワクするホルモン)が放出され、快楽状態を作り出すからなのです。

その一方で、

不快な出来事によって、

自分に生じた不快な感情や不快な思考が再発し、血圧があがって、肩に力が入って、早口になって、眉間にシワが寄って、また思い出しては不快になって、

が、しばらく続きます。

このようなことが続くと、コルチゾールというストレス時に放出されるホルモンによって、大脳の前頭前野、海馬、帯状回などがダメージを受けます。

他人を責めている時には、例え、心のつぶやきレベルであっても、脳神経システムは私たちの見えないところでストレス反応を起こしているのです。

それどころか、

「自分の症状を治したい」という思いから、呼吸法をしている、行動時自己洞察もやっている、記録も書いている、運動をしている、ごはんもちゃんと食べているのに、

「あの人のせい」という思いが、実践効果のブレーキになるどころか、後退させる力となってしまうため、よくなるものもよくならないのです。

しかし、自己洞察スキルが発揮でき、自分がやっていることがわかれば、それを止めることができるようになります。

そこで、自己洞察の基本を確認し、改めて質の高い練習をしていきましょう!

そもそも自己洞察ってなんだっけ?

自己洞察について復習しましょう。
うつ・不安障害を治すマインドフルネス―ひとりでできる「自己洞察瞑想療法」をお持ちの方は、26ページに書かれています。

引用させていただきます。

「今、ここ」の瞬間に、自分の心を観察し、現在進行形で自己を深く知ることが自己洞察です。

自己とは、他者や環境を通して意識されている自分のことです。

自己洞察スキルは、刻々と変化する時間の中で、意識される「現象」と、それを意識できるよう奥で働く「作用」が把握できるスキルです。

例えば、雲ひとつつない晴天の日に私は海を見ているとします。状況は刻々と変化していますが、とある一瞬を切り取ります。
・景色(空・海・砂浜など)
・音(波の「ザバーン」・風の「ヒュー」など)
・匂い(なんとなく潮の香ってヤツ)

私には同時いくつかの現象が意識できます。

時間差で
「わー、空、青いなあー」
「天気だけど、波が高いなー」

などの、つぶやき・言語による現象が続き
同時に景色や音、匂いなども意識できています。

景色、音、匂いが意識できるのは、私たちに視覚、聴覚、嗅覚という「作用」があるからです。
頭の中でのつぶやきがテロップのように流れるのは私たちに思考という「作用」があるからです。

刻々と意識できるものは変わっていきます。

と言う感じで、自己洞察がなされていくのです。

嫌いなあの人をあるがまま観る

私にも苦手で、嫌いな人がいます。

例えば、しかめっつらで舌打ちする人です。

この状況は、私にとってはとても不快で、冷静になれず、以前はなかなかリアルタイムで自己洞察などできませんでした。

実際は、私の心の中に映し出されている現象は、

眉間にシワをよせている相手(視覚作用)
同時に「チッ」という音(聴覚作用)

そして、瞬く間に

私の方も眉間にシワが寄る・「カチン」「イラッ」「ムカっ」(感情作用)
「何なの、その不機嫌な態度は!」(思考作用)
「悪いのはそっちでしょ」(思考作用)
「え?私、何か悪いことした?」(思考作用)

などと、身体が反応したり、言語が頭の中、あるいは口から外へと出ていきます。

これらの観察を含めて、うつ・不安障害を治すマインドフルネス―ひとりでできる「自己洞察瞑想療法」の27ページにある私たちの「心の場所(意識の野)」で起きているのです。

こういうことがいちいちできるようになってくると

「あー、心の場所のスクリーンみたいなところに、現象として映ってる、浮かび上がってきている、入ってきているんだよねー」

としか思わなくなるんです。

あるがままに観ることができるようになるってことかな。

自分が陥りやすいパターンを認識し、別のパターンに変える練習を!

「他人のせいにしたい」「他人を悪く言いたい」というのは、私たちが身につけてしまっている脳のパターンです。

脳のパターンを変えるには、考え方を変えるとか、気をつける・意識するとかそれだけでは十分とは言えません。

パターンの変更は、実際に「今まで繰り返していたパターンを変える別のパターンの練習」が必要なのです。

その練習を通して関連する脳のニューロン(神経細胞)が活性し、やがて結合し、そのパターンを体得していきます。

その鍵を握るのは、やはり背外側前頭前野や前部帯状回のあたりの活性と言えるでしょう。

それによって、自己洞察が冴え、衝動を抑制することができるようになります。

1つのパターンを克服することができると、他のパターンも克服しやすくなります。

その積み重ねが、症状を克服する脳神経システムの構造的な変化を生み出していくのです。

どうか諦めないで自己洞察の質を上げていきましょう。

  • この記事を書いた人

羽利 泉(はりいずみ)

石川県金沢市でカウンセリングや「うつ・不安障害を治すマインドフルネスーひとりでできる自己洞察瞑想療法ー」の講座をしたり情報を発信している公認心理師(国家資格)・マインドフルネス瞑想療法士です。マインドフルネスの実践を通し、心身症状で悩む方のサポートをしています。