トレーナーの羽利です。
このところ、立て続けに、友人に「マインドフルネスが流行ってるよね〜」って言われるんですが、未だそう感じることができない私です。
さて、今回の質問ですが
「マインドフルネス瞑想をしていますが、一向によくならないどころか悪化してきているように思うのですが、そういうことはありますか?」
結論から言います。あるかないかで言えば、「あります」です。
このようなことが起きうることは、マインドフルネス瞑想療法士の養成講座でも大田健次郎先生からうかがっていました。
当時はピンときていませんでしたが、支援を始めた今は「そりゃそうだよなぁ」と思えます。
今日は、このことについて書いてみたいと思います。
目次
あなたが実践しているのは「治すマインドフルネス」ですか?
昨今、静かなブームとなっているマインドフルネスは、感覚(食べる時など)、身体動作(歩く時など)、呼吸の無評価の観察を中心にしているようです(テレビや書籍で紹介されているもののうちのいくらかは、私にはそう見えます)。
私が思うに、症状の程度にもよりますが、感覚、身体動作、呼吸に注意を向ける「マインドフルネス瞑想」だけでは、症状を減らす、再発を防ぐという点では不十分だと考えます。
支援してみて思うのは、うつ病や不安症は、感覚、身体動作の無評価の観察のほかに、もっと「深く広く観察するマインドフルネスを真剣に実践することが必要」であるようです。
これまで、クライアントさんの支援してみて感じているのは、
症状の程度にもよりますが、めまい、吐き気、動悸、鉛のように体が重いほかの身体症状に深刻な不調がある場合、
マインドフルネス瞑想(呼吸法)に、その他の実践を組み合わせることが、回復の可能性や、回復のスピードを早めている感じがしています。
例えば、組み合わせる実践方法として
●運動:有酸素運動やスクワットのような運動や日常生活でのこれまでやってこなかったような活動(非習慣的行動)により脳を活性化すること。
●行動時自己洞察:行動時に自分の思考や感情、感覚、行動に対して「気づく訓練」を何度も「筋トレ」のように行ったりすること。
●日記を書く:自分を振り返り、書くことを通して、自分に気づくこと。
などがあります。
特に、行動時自己洞察は無意識に始まり止められない思考や感情に気づくことで、それらをやめることができます。
それらが不快な症状を生んでいることを突き止めれば、思考や感情、行動、感覚の織りなすパターンを変えることができる糸口を見つけることができます。
実際は、このパターンを変えていくことによって起きる「脳神経システム」の変化が、症状の緩和や再発防止に大きな影響を与えていくのだと思われます。
マインドフルネス瞑想(呼吸法)は、うつ・不安障害を治す上で、とても有効なのですが、ごく1部のソリューションであることを心に止めおく必要があります。
改善より早いスピードで悪化していく症状
瞑想してるけど、よくならない、むしろひどくなっているということは、やり方の精度はもとより悪化のスピードが、改善のスピードがより早いということも考えられます。
それは、人それぞれ条件が異なるために、なんとも言い切れないのですが、
・体力が落ちている
・仕事の環境や条件が厳しさを増している
・以前にも増して、思考や感情の暴走が止められず精神症状どんどん強くなっている
など、外部・内部環境は日々変化します。
ですから、それに合わせて自分も適応していかなければいけないのですが、いかんせん強くなっている症状の影響で、なかなか適応できない、
そういうことは往々にして起きるのです。
瞑想のやり方が、あってる間違っているという以前に、
「治す」ためには、身体や動き、呼吸に注意を向けるマインドフルネス瞑想だけでは「不十分」なのだという点を理解する必要があるのではないかと思うのです。
治す理論・治す哲学を実践
本当に症状を軽減させたい人は「とにかく早くよくなりたい」というのが本音だと思います。
北陸マインドフルネスセンターのクライアントさんの大半が最初はそうです。
「何をすればよくなりますか?」「どれくらいでよくなりますか?」「本当によくなりますか?」などなど・・・
何をすればよくなるかは、立場上、「うつ・不安障害を治すマインドフルネス」を丁寧にやることをお勧めしたいのですが、
どれくらいでよくなるかはその人の症状や内外の環境によってマチマチです。
自己流ではなく、「落ち着いて」テキストに忠実にやれば、一定の期間で症状が緩和する方が大半です。
自己洞察瞑想療法は「脳神経生理学」を根拠にしています。
しかし、北陸マインドフルネスセンターのクライアントさんにおいては、セッション開始前に自分の脳の中で何が起きているか理解している人は稀です。
お医者様も教えてくれません。ですから、私たちは、一緒に勉強していくのです。
知らないので焦り、知らないから不安になります。
脳神経システムを知れば、何をすれば症状が軽減されていくかわかり、焦りや不安、怒りなどのあまり歓迎できない感情や、グルグルと空回りする思考もコントロールできることがわかります。
大脳辺縁系の扁桃体、ストレスホルモンを分泌させる副腎皮質、パニック発作を引き起こす中脳水道周囲灰白質の亢進や、ストレスホルモンによって傷つく前頭葉の前頭前野や前部帯状回などの機能低下など
細かい名称は最初はわからなくても、
自分の脳神経システムの調子がすぐれないんだと理解するだけでも、自分を、自分の性格を、自分の人格を責めずに済みます。
また、自己洞察瞑想療法の背景には禅仏教があります。
教義を盲目的に信仰するのではなく、仏教を哲学として学ぶことで、自己の構造を複層的に理解し、より深い自己は、決して拙速で浅はかな判断や評価もしなければ、ありもしない不快な妄想を作り出したりもしないと考えることもできます。
「そんなことまでしないと治らないんですか?」
と言われるかもしれませんが、健康な人でも、心理的な葛藤を繰り返すことは多々あるでしょう。
症状から回復できたとしても、
認知が変わらなければ、自分の苦しみを受容できなければ、何度も同じ苦しみに苛まれます。
他者や社会に対しての自分の態度が変わらなければ、何度も同じ苦しみに苛まれます。
それは、健康な人であったとしても起きることです。
だから、症状が減った、現れなくなったと言っても、再発しない練習が必要なのです。
自己洞察瞑想療法は根治療法です
テレビや書籍、雑誌で紹介されているマインドフルネス瞑想は、深刻な心身の症状を減らすことにコミットしていません。
ですから、治したい(うつ病を改善したい)人は治す(病気を改善する)理論のあるマインドフルネスを実践する必要があります。
マインドフルネスが広く紹介されるのはいいことですが、すべてのマインドフルネスの手法が「治す」ことを目指している訳ではないということをどうか理解してください。
症状は十人十色であり、回復プロセスもまた十人十色なのだと思います。
「そんなことはないよ、ちゃんと効果出ていますよ」という方は、症状が比較的軽かったのかもしれませんし、そのプロセスで幸運にも大きなパターンを解消することができたのかもしれません。
マインドフルネス瞑想を実践しても一向によくならない心身症状を抱えながらも「これでいいのかな」と迷いながらやっている方には、少しこの記事が立ち止まるきっかけになることを願っています。
皆さんの症状が長引かないこと、悪化しないことを願っています。