先送りされる未完了の人間関係の問題をマインドフルネスの実践ではどう扱うのか?(1)

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トレーナーの羽利です。

皆さんもご存知の通り、マインドフルネスの実践はストレスケアになるということで注目されています。

忙しい毎日の中で、考えることをしばらくやめて、ゆったりと呼吸をすることで、脳神経システムが平和な状態になり、マインドフルネス瞑想に幸福感を感じられる方もいらっしゃることでしょう。

そして、そんなマインドフルネスの実践が、仕事の効率を高めたり、人間関係をよくするということも知られているのですが、

日々マインドフルネスの実践を続けていらっしゃる皆さんはそろそろそのような変化を感じていらっしゃいますか?

「いや、まだそんな変化は感じられていないです」
「静坐瞑想の時は、すごいいい感じなのに、職場や電車の中ではイライラすることが多くって」

という方もいらっしゃると思うので、

今日はその背景にあるかもしれない「未完了の人間関係」にフォーカスして書いてみたいと思います。

自尊感情を高めるマインドフルネス

マインドフルネスのトレーニングをすると、不要な思考や感情に苛まれることが減り、自分にとってとりわけ「好都合なこと」については、行動に集中しやすくなり、自分の願っていた成果を出しやすくなっていくことに気づきます。

そして、さらにうまくいくと「有能感」が生まれ、「自尊感情」が高まります。

自分と自分のやっていることが好きになり、「ノリノリの状態」になります。

ところが、あるところでこの「ノリノリ感」が高止まりすることに気づく方がいます。

行動の量や質にこれまで得られていた満足感が得られなくなる時期がきたりもします。

そして、実は、知らず知らずにそのブレーキとなっているのが、内心不快と感じている「人間関係」の問題であったりします。

先送りされていく人間関係の問題

例えば、家族や職場の人間関係に未解決の問題を抱えていると、争い合いたくないから、直接的な対処を回避したり、特定の人物から逃避してしまうことが起きがちです。

また、家庭や職場の特定の人との関係の問題で起きた感情を引きずり、その後のコンディションに影響するなどということも起きたりします。

(例:朝出がけにした夫婦で言い争いをして、嫌な気分を断ち切れない。会社で上司に一方的に叱責されたことが帰宅しても忘れられない。)

しかし、特定の人との間に起きる「強い感情」を引き起こす未解決の問題においては、

いくら静坐瞑想をして、不快なことに気づいたら流すということを続けても、

一時的に忘れたり、抑圧したり、関わらないようにしても、深いところでは静かにしていることはできず、

脳神経システムは知らず知らずのうちに「闘争・逃走のモード」を選んでいます。

このようなモードでは、大脳基底核にある「扁桃体」が活性し、自律神経のうち、交感神経が優位になり、身体に緊張や興奮を引き起こします。

抑圧していた感情(イライラや予期不安)や思考が頭をもたげるようになると、「扁桃体」の活性が一層進みます。

そうなると、大脳の前頭前野がコントロールタワーとしての主導権を奪われ、冷静さを欠く状態になることを私たちは知らず知らずに学習しているので、

不快な「闘争・逃走のモード」を回避すべく、不快と感じる「人間関係」の問題は先送りし、自分を防衛することで対処することはよくあることです。

(命が脅かされるような問題からは、もちろん離れなければなりません。人に助けを求めて守ってくださいね!)

しかし、そのような命を脅かすほどでもないものの、自分にとっては不快な問題を先送りせずに、心地よく過ごしていきたいと思った時に、

直接・間接的に問題を感じている人間関係を避けていると、葛藤が長く続いてしまうことがあります。

解決策はよりどりみどり

現代社会は「1億総ストレス社会」だと言われたりもします。
そう言い切れるかはさておき、大なり小なりのストレスを感じている人は多い昨今です。

そして、働く人たちが職場で感じるストレスの第1位は「人間関係」です。

書店にいくと、人間関係について書かれた本はたくさんあり、私たちは人間関係の問題の解決策をいくつも知ることができます。

しかし、自分にとってしっくりこない解決策は実行に移されることはなく、外に答えを求め続けているうちに時間は流れていきます。

もっとお手軽な対処方法があればいいのになぁ・・・

でも、こればかりは、もう人と人の組み合わせによって、対処方法はいくつも考えられますよね。

人と人の問題を解決する答えはたった1つではなく、解決策の選択肢は複数あるに越したことはありません。

「今、ここ」で本当に自分と相手が「いい感じ」でわかち合うにはどうしたらいいんだろう?って関心を持ち続けて、実践し、

うまくいってもうまくいかなくてもそこから学んでいくっていう覚悟が決まると、

人真似ではなく、自分自身がクリエイティブな解決策をいろいろ試せるかもしれませんね。

心理学の定説:「他人と過去は変えられない」

私たちが人間関係の問題解決を急いだところで、相手が同じように急いでいるかというとそうでもありません。

そして、自分が選んだ解決策が「いい感じ」になるかというと、相手には相手の「感覚・感情・思考・行動」があるので期待した反応が得られると限りません。

指示命令できる関係でない限りは、相手の行動を直接、権限を行使してで変えることは難しいですね。

上司・部下の関係のように、上司に権限はあっても、信頼関係がなければ、パーソナリティに深く立ち入ることは難しいです。

できることは、変わるような影響を及ぼしていくことです。

変化は遅れてやってくる

何か決意を持って臨んだ解決策で、「撃沈した〜」「伝わってない」「しっくりきてない」と感じたとしても、あなたの関わりは相手に何らかの直接的・間接的な影響を及ぼしています。

そして、それは即効性が保証されているわけではありません。

私たちには、影響を及ぼして、影響を受ける「相互作用」は、リアルタイムではなく、遅れて作用する場合もあるのです。

人間関係を包括するシステムの中で、「遅れ」を伴いながら、変化がゆっくりと起きていくことを私たちは気づいていなかったり、忘れたりします。

むやみに急ぐことは、新たな悩みを増やします。

「今、ここ」に止まって、今までの自分ならこうしていたという習慣的な行動とは少し違った「自分と今を変える」行動を起こしてみるというのはアリなんじゃないでしょうか?

そして、それを支えていくのも日頃のマインドフルネスの実践なのです。

最後に

マインドフルネスの実践に習熟していくと、自分のフィルターを通して「好都合」「不都合」と判断していることに気づき、その結果、あるがままに状況を観れるようになります。

そして、「自分にとって」好都合なことの中だけでマインドフルであることよりも、「自分にとって」不都合なことと判断していることの中で、マインドフルでいることが、いかに難しいかということにも気づくようになります。

マインドフルネスの実践は、そのような難しい局面を、回避したり、問題の解決を諦めたり、先送りしするという選択肢の他に、

まだできることがないか自分の「創造性を発揮していくこと」に役にたつ習慣です。

次回は、この問題にマインドフルネスの実践がどう役にたっていくのか、少し提案してみたいと思っています。

今回は、マインドフルネスが集中力を高めて、仕事の成果を手にする上で侮れない先送りしている人間関係の問題で起きていることについて書きました。

お読みいただきありがとうございました。

続く

  • この記事を書いた人

羽利 泉(はりいずみ)

石川県金沢市でカウンセリングや「うつ・不安障害を治すマインドフルネスーひとりでできる自己洞察瞑想療法ー」の講座をしたり情報を発信している公認心理師(国家資格)・マインドフルネス瞑想療法士です。マインドフルネスの実践を通し、心身症状で悩む方のサポートをしています。