自己洞察瞑想療法の体験談:自分のより良い状態を目指して〜逃げても何も変わらない〜(前編)(40代:男性)

トレーナーの羽利です。

北陸マインドフルネスセンターでの自己洞察瞑想療法(以下SIMT)の8ヶ月のセッションを終えられたクライアントさんが体験談をお寄せくださいました。

同じように苦しまれている方の助けになればとのことでお申し出いただき、ありがたく掲載させていただきます。

後編では、私からコメントをつけさせていただきました。

自分のより良い状態を目指して〜逃げても何も変わらない〜 ー前編ー

PUKU(ペンネーム)
40代:男性 セッション期間:2018年9月~2019年4月

本体験談は、日本マインドフルネス精神療法協会発刊「マインドフルネス精神療法 第6号」に掲載されます。

要約

家族関係の崩壊により、精神的に不快な感情や思考を止めることができなくなった。

シングル・ファザーとして朝から晩まで気が休まらず、身心ともに疲弊した。自己洞察瞑想療法に長期的に取り組むと覚悟を決め、特に精神状態がひどい時もとにかく実践した。

やがて、心が整うようになり、好きだった絵を描くようになった。

過去に原因を探すことよりも、過去の自分に気づき、自分の生き方に無理があったことに気づいた。今は、ありのままの自分の気持ちを大事にできるようになった。

人前に出るのもやっとだったのに今では自治会の役員を務めるようになった。マインドフルネスを習慣化し、気持ちや思考の整理ができるようになった。

考え方を変えるということは難しいが、逃げてしまっては何も変わらない。それが今後もマインドフルネスを実践する理由である。

自己洞察瞑想法に辿り着いた経緯

私がマインドフルネスを生活に取り入れるようになってから、1年半ほどになります。マインドフルネスに出会う前には心療内科にも通っていました。

家族の崩壊

それは、2年半ほど前にさかのぼり、その当時、私は家庭を持っていましたが、妻の不貞行為により関係が悪化し、一気に家庭もバラバラになってしまいました。

その時に、自分が今まで築いてきたもの、そしてこの先にあった未来も全てがなくなってしまったという気持ちになりました。

そして、妻と相手の男への激しい怒りと憎しみ、悲しみで、殺意さえ覚えるくらいの激しい感情を抱きました。

少しでも自分で納得のいく方法はないかと弁護士に相談したりしたものの、現実的にはどう解決することもできないということに悩み、苦しみ、このことを抱えているうちに、とても精神的にひどい状態になっていきました。

そして、あまりにも精神症状が悪化し、普段の生活にも支障をきたしてきたので、心療内科に通い、薬飲んで改善していくようになりました。

その後、先生のカウセリングと薬も使い、少しずつよくはなりましたが、それでも朝、目がさめても体を起こせないくらい気分がひどい日も多々ありました。

シングル・ファーザーとして追い詰められる日々

その後、子供を引き取り、離婚をし、新しい生活を選択しましたが、毎日、毎日ずっと気分が落ち込んだままの状態はなかなか変わりませんでした。

さらに子供との生活で仕事と家事をこなすために、朝早くから夜遅くまで動かざるをえない状態で精神的にも疲れ果てて、自分でもどうすればよいのかわからなくなっていました。

そんな時、たまたまネットで見つけたのがマインドフルネスでした。

心療内科に通い、ある程度良くはなったのですが、薬に頼っているよりも、自分自身をもっと改善しなければという思いもあったので、心療内科に通うのをやめて、それからマインドフルネスをするようになりました。

自己洞察瞑想療法の実践とその経過

同じことが頭の中でグルグルする日々

マインドフルネスを始めた頃は、全く変化を感じることができませんでした。

マインドフルネスといっても自分でできているのか、いないのかの判断もつかず、何もわからないまま何となく時間は過ぎて行きました。

でも、そこでやめてしまっても他に頼るものもなく、怒りや憎しみの感情で、毎日毎日、同じことを頭の中でグルグル繰り返し考えている状況を変えたかったので、続けるしかないと思っていました。

ある日の講習中、脳についての説明で、脳は色々考えたくて、しかも心配なこと、不安なことを考えたがるということを知りました。

そして、その考えは、本来の自分とは別に浮かんでくるものであると知った時に、脳に浮かんでくるものに惑わされずに本来の自分を感じられるようになりたいと思うようになりました。

講習の中でも出て来る「今に集中する」という言葉は、シンプルですがとても深い言葉だと思います。

つらいことを何度も、何度も思い出して、頭の中でグルグル考えている、それは自分で自分の脳を傷つけていると気づいた時に、「今に集中する」ということの大切さがわかるようになり、まさにそれをトレーニングしていきたいという気持ちになりました。

長期的な実践と腹をくくる


それは、すぐにできることでもなく「脳の筋トレ」ということも講習で教わっていたので、時間はかかっても、コツコツ続けて行こうという気持ちでいました。

最初の数ヶ月は、「気持ち上向きにするのは、今の自分にはできないない、ならば落ち込むのだけをやめて何もないゼロでいい」ということに自分に言い聞かせました。

そして、頭の中に嫌な想いをとどめておかない、出て来たらちょっと横に置いておくということを繰り返しているうちに、頭の疲れ方が以前のグルグル考えていた時とは違うとはいうことに気づきました。

頭が疲れないと気持ちにも余裕ができてきます。特に、子供との生活の中でもその気持ちの余裕がとても大切だと痛感しました。

そのことを知るともっともっとマインドフルネスをしたいという気持ちになりました。

「価値・願い」と諦めていた夢

他に、マインドフルネスの中で、価値・願いを思い起こし、自分の中で良いイメージを持ち、そこに思考や行動を向けて行くという課題もあったので、以前から好きだった絵を何十年ぶりに描くことにしました。

もちろん、日々の生活の中で気持ちのゆとりもなく過ごしていたので、上手くは行かず、最初は全然描けない日々が続きました。

でも、マインドフルネスをやり続けることによって、少しずつ気持ちが落ち着くようになりました。

そして「できる時に描く」という風に続けていると、だんだんと気持ちが落ち着いている時間も増え、やがて、絵を描く方にも気持ちを向けることができてきました。

新たな自分への気づき

今までは、嫌な思考にだけ囚われて、今に集中できずに五感で感じることも忘れている状態でしたが、マインドフルネスをやり続けていると、そういう状態も自分で気づくことができるようになりました。

そして、改善して行く中で、自分自身の気持ちを整えるということの大事さがとてもよくわかるようになりました。

今回起きた離婚という出来事を原因からだけではなく、今までの自分の生き方で無理はしていなかったかなど、しっかりと自分の気持ちに向き合うことの大切さがわかるようになりました。

今でもまだ怒りや憎しみや悲しみなどはありますが、それはこれから先もマインドフルネスを意識し、続けて行けばまた違った捉え方もできるかもしれないと思っています。

かけがえのない習慣

今では、毎日、朝会社へ行く前に必ず20分は瞑想の時間を取るようにしています。

休日など時間がある時には更に長い時間したり、違う時間にちょっとしたり、今ではしないという日はなくなりました。

それくらいに自分の生活には必要なことになりました。やり始めた時は、毎日の忙しさなどで時間が取れないとかやる気が出ないとかやりたくない言い訳を自分につけてやらないこともありました。

それでもやり続けているうちに、とても頭の中がスッキリというか整理されるという感覚が持てるようになりました。

そうなると、1日の中で20分という時間を使ってやるのとやらないのでは、後の時間の過ごし方が全く違うというがわかるようになり、それからは瞑想をやらない方が気持ち悪く感じるようになりました。

回復者の皆様からの体験談:自分のより良い状態を目指して〜逃げても何も変わらない〜(後編)に続く

  • この記事を書いた人

羽利 泉(はりいずみ)

石川県金沢市でカウンセリングや「うつ・不安障害を治すマインドフルネスーひとりでできる自己洞察瞑想療法ー」の講座をしたり情報を発信している公認心理師(国家資格)・マインドフルネス瞑想療法士です。マインドフルネスの実践を通し、心身症状で悩む方のサポートをしています。