自己洞察瞑想療法のセッションでは、記録表Aは必ず提出しなければならないのでしょうか?〜記録表Aの極意〜

トレーナーの羽利です。

最近、自己洞察瞑想療法で回復したクライアントさんの体験談を公開させていただくようになりました。 → こちら

開始時は、症状が厳しくて、とにかく自分がよくなることで精一杯だったのに、セッションが終わる頃には、「世のため、人のため」にと体験談を書いて下さるのですから、本当にその変化は、しみじみうれしいものです。

これが、まさに再発をものともしない自己の発露なのだと思います。

さて、今回は、一進一退はあれど、最終的には10ヶ月でなんとかよくなった、再度同じような状態に陥らないぞと手応えを得ている人たちがやっていることの1つをより一層掘り下げてご紹介します。

トレーナーとの交換日記?「記録表A」の極意

うつ・不安障害を治すマインドフルネスの234ページ以降には3種類の記録表が附録としてついています。

この中でも、234ページの記録表は、自己洞察瞑想療法を続ける方にとって非常に重要な記録表です。

一般的にこの「記録をつける(ジャーナリング)」とういう実践は、認知行動療法においてはごく普通に行われることですので、特殊な課題ではありません。

パーソナルセッションをお受けになるクライアントさんは、提出は必須です。
(初回のお試し期間では、提出がない場合は第1セッションの開始ができません)

1日、わずか3〜4行ほどしかかけないスペースですが、クライアントの皆さんはここに日々自分を観察してどんな「気づき」があったのかを書いていきます。

あれをしました、これをしましたという日記ではありません。

皆さんの記録は、各セッションを実践して、自分を観察していく中で、自分の思考・感情・行動・感覚からの気づきが書かれています。

ただ、いつもいつも気づきがあるわけではないと思いますので、時々「日記風」にもなったりするのもありえることです。

それに対して、トレーナーの羽利は、1つ1つコメントしていきます。

やっていることは、セッションで学んできたことを、「実践できていたらできている」とフィードバックすることです。

特にうつ・不安障害などのこころを患う方は、課題通りにできているのか、できていないのかに囚われがちです。

クライアントさんにとっては、そのこと自体が、物事をあるがままに見れていないということを知る第1歩になるのですが、最初のうちはそういう自分にも気づきません。

「これであってるのか?間違っているのか?」「自分はできているのか、いないのか?」

これって、「評価・判断モード」ムンムンですよ〜(汗)

って言っても、なかなかわかってもらえません(涙)

これは早くても第2セッションぐらいまで続く方が大半というのが私の感じ方です。

ですから、こちらから必要に応じ、率直に「フィードバック」するようにしています。

「それができている、やっているということですよ」とお知らせすることで、その後の実践で不要な迷いがなくなると思うからです。

迷っている間、猜疑心に駆られている間は、本当に大事なことが学べないのです。

記録表Aはどれくらいの頻度で書けば良いのか

14日分でいいですよと言っているんですけど、書かずにはいられないのか、性分なのでしょうか、毎日書いていらっしゃる方が実に多いこと。

どうやら先に日付を入れてしまうそうですよ。
継続、定着させるための工夫なのでしょうね。

書くことは、振り返り、言語化することです。
静かに座って、散漫な思考や感情に飲み込まれずに、いまいちど振り返って文字にします。

それによって脳の前頭葉の前頭前野や言語野が活性します。

そして、書きながら気づき、書きながら現状を整理し、書きながら未来を再計画するのです。

自己洞察瞑想療法では、傾聴を主体とした心理療法ではありませんので、じっくり話を聞く時間は、パーソナルセッション以外ではあまりないと思います。
(グループセッションではほとんどその時間はないです)

実は、こうしてクライアントさんは、次のセッションまでの1ヶ月間、自分で自分をカウンセリングすることができるのです。
素晴らしいですね。

ありのままの自分を開示していただくことで見えること

一般的にクライアントとカウンセラーとの間に信頼関係ができていないうちは、ためらいなく自分を開示することは難しいものです。

ですが、トレーニングの開始から時間の経過とともに、クライアントさんは、日常的に何度も何度もつまずく場面や陥りやすい感情や思考が記録表に書いていらっしゃるようになります。

こうなってくると支援する側としては、回復のポイントがよりクリアになってきます。

そのクライアントさん、クライアントさんの「最も強いパターン」を理解し、克服していくことは、脳神経システムの機能亢進、機能不活性に大きな影響を及ぼすことであるため、回復への覚悟が決まり、日常生活でのトレーニングへと力強く歩み出すように見えます。

そうやってセッションは10ヶ月進んでいくのです。

自己洞察瞑想療法は積極助言型の心理療法です

私は、これまでカウンセリングやコーチングを学び、自分自身がクライアントとなりセラピーを受けたりして、来談者中心であることがその人にとっていかに安心して自分を語り、その中から自分に気づき、そしてこれからの新しい力がみなぎっていくことを知っています。

しかし、自己洞察瞑想療法は、話を聞いてくれる人がいてもいなくても、「自分で自分の症状を治す方法」を学び、日常生活の中でトレーニングをしていく心理療法なのです。

カウンセラーやセラピストといった類の人の支援に頼らずとも自分で自分を立て直すことができることを学んでいくのです。

ですから、

私は、教える、誤った理解を修正するはもちろんのこと、理解できていない、やりたくないことをうやむやにしてやり過ごそうとしている時にはそれを指摘したりもします(と言っても、そんなに怖くないですからね)。

時には、開始の延期や、次の課題に進むことを延期する、中断を申し入れることも必要だと思っています。

これは、そう何例もあったことではないですが、これまでに私自身が看過したためにうまくクライアントさんを乗り越えさせることができなかったという反省も含んでいるのです。

中断に関しては、違うアプローチの方が、その方にとってうまくいく場合があるからです。

そんな時、私は、自分の信奉する自己洞察瞑想療法への万能感を手放して、いたずらにセッションを引き延ばさないことが誠意だと考えています。

クライアントさんを路頭に迷わせることがあってはいけませんので、こちらも責任を持って助言を心がけております。

このような例は頻繁に起きるわけではありません。

ですから、とにかく毎月毎月の課題への支援を、真剣に的確に行いながら、助けすぎることなく、クライアントさんとは二人三脚でトレーニングにお付き合いさせていただくことそれだけです。

それは、他のカウンセリングやセラピーと比較すると違和感があるかもしれませんが、これが私が行う自己洞察瞑想療法のトレーニングの考え方です。

クライアントさんへのフィードバックは、書きすぎているかもしれません。
(プライバシー保護のためぼかしを入れております)

フィードバック

それでも、皆さんには、しっかり読んでいただき、着実に課題に取り組んでいただくことをありがたく思っています。

本音をいえば、非常に骨の折れる仕事ですが、これからも大事にしていこうと思います。

  • この記事を書いた人

羽利 泉(はりいずみ)

石川県金沢市でカウンセリングや「うつ・不安障害を治すマインドフルネスーひとりでできる自己洞察瞑想療法ー」の講座をしたり情報を発信している公認心理師(国家資格)・マインドフルネス瞑想療法士です。マインドフルネスの実践を通し、心身症状で悩む方のサポートをしています。