トレーナーの羽利です。
さて前回は「金澤と禅(3)鈴木大拙館へ、禅を英文で世界へ紹介したD.T.Suzukiの故郷・金沢」をテーマに、主には鈴木大拙館について書きました。
今回は、最終回です。
禅やマインドフルネスをキーワードにこのホームページにいらした方に、金沢を旅していただくちょっとした目のつけどころついて書いてみたいと思います。
金沢は小さな街ですが、観光資源が多く、何度も来てほしい街でございます。
いわゆる観光で終わることなく皆様のこころの旅となることを願っています。
禅文化を体験
金沢は、古くから茶の湯が盛んですから、様々なところで「茶道」の体験ができますし、「香道」には、香りを鑑賞したり、香りを「聞き」当てたりする楽しみ方があります。
茶室の床の間に掛けられている掛け軸の文字を見ると禅の言葉であることが多々あります。
下記の写真は「平常心是道」です。
ためになるコラムを見つけましたので参考にさせていただきます→こちら
なるほど、いかに日頃の行いの中で、つまらない考え(妄想や分別)を捨て、当たり前のことを当たり前のようにやるかの積み重ねであると思い知りますね。
脱線しましたが、茶道では、本来は、立ち振る舞いや礼儀作法などが決められているのだと思いますが、金沢では手ほどきを受け、誰もが気軽に体験ができます。→体験するには?
自分の身体の動きや、その時々に感じられる感覚、他者との関係性で即応する動きの連続や言語化など共通点があると感じます。
また、鈴木大拙は「Zen and Japanese Culture」の続編で「禅と能」を紹介しています。
能のたしなみがない私には、禅文化として能を理解するには至っていませんが、金沢では、定期的に能楽の鑑賞が可能です。
ご興味がある方は、開催日を事前にお調べいただき、ぜひ能楽堂に足をお運びください。→開催日はこちらから
美食の宝庫
また、美食の宝庫と言われる金沢は、山海の幸に恵まれ、加賀藩の饗応料理や茶道の懐石料理の影響を受けた美しく繊細な味わいの料理が健在です。
そして客人をもてなす部屋の壁が「朱色(べんがら)」や「群青色」であることがあります。
これらは、「加賀の色壁」と言い、朱色は全国的にも見られますが、群青色はかなり珍しく、高貴な方をもてなす客間に用いられます。
また、料理を引き立てる伝統工芸品の漆器や陶器にも注意を向けると、動員される感覚受容器が喜び、楽しみの、驚きの感情を喚起することでしょう。
これを禅文化と言うかは微妙ですが、食に「マインドフル」であることが、旅の楽しみを1つ増やすことは確かと太鼓判を押させていただきます。
この件については、数年前に放送されたNHK Eテレ「美の壺」 file160 file161 が参考になります。
旅の前にご覧になると良いかもしれません。
禅がつなぐ世界、そしてマインドフルネスへ
金沢で暮らしていると、鈴木大拙の「Zen and Japanese Culture」が、日本と他国をつなぐ懸け橋になっていることを強く実感します。
そして「Zen」や「Mindfulness」は、国境を超えて人と人がつながる友好や平和のキーワードだと実感します。
江戸の藩政期や鈴木大拙が生きた時代から月日は流れ、カジュアルが禅の実践が、欧米から「マインドフルネス」という言葉で逆輸入されたかのように言及されることがあります。
しかし、禅とは、古くから私たち日本人の日常生活の中に息づいてきた思想であり、実践であり、日本人に脈々と受け継がれてきた習慣が織りなしてきた文化として日本人の暮らしの中に今も昔もあり続けます。
ただ、私たちが無意識になりがちなのだと思います。私は、欧米主導の「マインドフルネス」は、私たちの暮らしを見直すきっかけをくれたのではないかと感じています。
世界各地の文化(主には信仰と結びついていた)の中に「マインドフルネス」があると思います。
欧米を中心に、鈴木大拙が紹介した「禅」が受け入れられ、人々の幸福に役立つことになりました。
/
禅語「本来無一物」の通り、東洋思想では西洋も東洋も、浅いも深いも「分別」されることなく、すべてが1つです。
日本人は「無分別智」を創出できる資質を受け継いでいます。
ですから、他国でのマインドフルネスの成功事例に敬意を払い、それらをさらに包む寛容さで、今の時代に生きる「禅」「禅文化」を継承していくこと、
日本らしさを決して損なわない本質的な「マインドフルネス」を一途に実践していくことは、いつの時代も世界との調和、世界平和への貢献になっていくものと思います。
最後に
この紀行文は、鈴木大拙館の学芸員である猪谷聡氏から解説いただいた内容なしには書くことはできませんでした。
毎度、様々なインスピレーションを与えていただき、心より感謝申し上げます。
これからも、禅文化の色濃いこの地域から気づき、学び、役に立つ活動をしていきたいと思っています。
皆様の北陸への旅の一助となれば幸いです。