これまであまりにも当たり前すぎて取り上げてこなかった自己洞察瞑想療法の最も重要な課題について書いてみたいと思います。
目次
心の中に入ってきて映るというイメージを作るところから
自己洞察瞑想はマインドフルネス瞑想と言えますが、うつ・不安障害を治す技術を組み込んだ瞑想であり、そのやり方は書籍となってうつ・不安障害を治すマインドフルネスの中に記載されています。
やり方がマニュアル化されているのですが、全て言語で理解するのは、始めての方には難しいと感じられるかもしれません。
特に悩ましいのは、27ページ③心に包んで映す、33ページ●洞察実践3●包んで映す などです。
これらは●洞察実践1●『ゆっくり呼吸法』や●洞察実践2●『自然の呼吸観察法』と組み合わせて実践する課題です。
私がマインドフルネス瞑想療法士の育成講座でもなかなか理解することができませんでした。
しかし、理解できないからできなかったかというとそうではなく、最初は何となくテキストに書かれているとおり、まずは感覚的にイメージを持ってやってみて、
やがて、繰り返しテキストを読んでいく中で、数ヶ月、数年かけて「そうか、そういうことだったか!」と気づいたものでした。
今は、少しでも多くの方に、感覚的ではなく、知識と実践がかみ合った形でトレーニングできるように、電子書籍の中で解説を加えたりしていますのでまだダウンロードなさっていない方はぜひご一読ください。
自己の中に自己を映す
この「映す」という発想はどこからきているのかというと、それは自己洞察瞑想療法が理論的な根拠としている「西田哲学」によるものです。
西田哲学の「知るということは、自己の中に自己を映すことである」という考え方を取り入れた実践です。
自己には深さがあり、階層化されており、最も深い自己は全てのものを分別せずあるがままに受け入れる場所です。
最も浅い場所に、私たちの心の働き(作用)が作り出した心理現象が映し出されます。
私たちが、花を見ている時、その花は、自己の中に取り込まれて、自己の中のスクリーンのような場所に映っていると考えます。
私たちが、車の音を聞いている時、その音は自己の中に取り込まれて、自己の中のスクリーンのような場所に映っていると考えます。
鏡やスクリーンに映るものは?
『◆洞察を深める実践1◆注意作用の洞察』は、呼吸法の中で行います。
したがって、鏡やスクリーンには、呼吸が映っています。
具体的には、吸っている、吐いているという体の動き(行為)やその時に感じる鼻腔を通る空気の冷たさや、体から出ていく空気の温かさ(外部感覚)などが映ってくるでしょう。
やがてエアコンの「ザーッ」という音(聴覚)や、目の前の畳の目(視覚)などが映ってきます。
呼吸を意識しながら、鏡やスクリーンにいろんな「内容」が映っては消えていく様子を観察します。
この時に、呼吸以外に鏡やスクリーンに映った内容は、呼吸がもっと深いところから包んでいるというイメージで観察をするようにするのがポイントです。
鏡やスクリーンが思考内容の専用席にならないように
ところがいつの間にか、思考が働いて、鏡やスクリーンのような場所で、思考の「おしゃべり」が始まります。
やがて呼吸を忘れて思考の「おしゃべり」が鏡やスクリーンのような場所を独占し始めます。
そうなったら中断を試みます。
もしかしたら中断しても、またおしゃべりは始まるかもしれませんが、それを嫌悪しないで、再度、呼吸に注意を向けます。
そして、目に見えるもの、耳から聞こえるもの、肌で感じられるもの、体の内側に感じられるものが、次から次へと鏡やスクリーンのような場所に現れてくるのを、呼吸で包むように観察します。
思考を嫌ったりする必要はありません。自然に自然にです。
何が鏡やスクリーンのような場所に、映るでしょう??
ただただ、呼吸をしながら興味を持って眺めるようにしてみましょう。
何が映ってもOKなのです。呼吸が包んでいるイメージを大事にしましょう。
実践を習慣にするために
姿勢の保持が難しい場合の対処法
うつ・不安障害の方の中には、筋緊張が強く、呼吸法をしていても、腰や肩に力が入ってしまい、不快感から静止が難しい方が多くいらっしゃいます。
その時には、自分が楽に呼吸法ができる姿勢を、時間がかかってもいいので試行錯誤してください。
無理して足を組んだりする必要はありません。正座が楽なら正座、椅子やソファーで背もたれにもたれかかって行うのもアリです!
壁を背もたれにして、両足を前に投げ出して行ってもいいでしょうし、立って行うのもアリでしょう。
大事なことは、痛みや他の身体症状に過剰に反応し、症状を言い訳にして実践しないということを回避することです。
自分の目的をかなえるために、試行錯誤している時には、前頭前野は活性していますので、あきらめず自分が快適に実践できるように吟味をしていきましょう。
時間が取れない場合の対処法
トレーニングは、最初はまずは5分時間が取れる時間帯を選びます。
宅内で静かな場所があればベストですが、通勤時の交通機関の中や、車通勤の方は、出勤・退勤の際に駐車場で行うなどもおすすめです。
食後は、難しい方が多いと思います。
最初は、就寝前もそのまま寝てしまうという方が多くなります(慣れてくればできる場合が増える)。
まずは5分を目指し、そこから時間を徐々に伸ばしましょう。
最初からうまくやろうという「野心」は捨てて、少しづつ慣れていきます。
大切なことは、これから行っていくトレーニングに好奇心を持っていくことです。
まとめ
・鏡やスクリーンのような場所に映るいろんなものを観察してみましょう。その時には呼吸がその場所より深いところから包んでいるようなイメージで眺めましょう。
・鏡やスクリーンのような場所が思考のおしゃべりの専用席にならないようにします。「考えている」ということに気付いて中断を試みます。
・どんな姿勢でやるか、どこでやるか、いつやるかなどは、固定概念に縛られずに、試行錯誤してみましょう。