自己洞察瞑想療法では、呼吸法(自己洞察瞑想・マインドフルネス瞑想・安静時自己洞察)や行動時自己洞察が毎日の課題となります。
しかし、多くのお客様は最初は難しく感じると思います。
今日はこれらの課題が少しでも順調にできるようになる秘訣について、マインドフルネス瞑想療法士の立場から書いてみたいと思います。
目次
そもそもマインドフルネスとは無評価で囚われのない状態
自己洞察瞑想療法は、マインドフルネスの実践を継続的に行うものです。
マインドフルネスとはそもそも何だったのか確認をします。マインドフルネス学会のホームページから引用させていただきます。
“今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること” と定義する。なお、“観る”は、見る、聞く、嗅ぐ、味わう、触れる、さらにそれらによって生じる心の働きをも観る、という意味である。
今、この瞬間の体験というのは、静かに座って呼吸に注意を向けるような呼吸法、いわゆるみなさんがイメージするマインドフルネス瞑想を例に挙げて考えてみましょう。
初心者が最初に陥る罠
マインドフルネス瞑想に興味を持った方の中には「不安やイライラなどで頭の中がぐるぐるしている状態を鎮める方法がないだろうか?」と探しているうちに、マインドフルネス瞑想にたどり着いたという方が一定数いらっしゃると思います。
いつも頭の中が、日々、思考で騒がしい状態で、今、目の前にあることに集中ができないというもどかしさを抱えていらっしゃったりもしませんか?
実は私もマインドフルネスのことを知った時には、同じような状態でした。
止めようと思っても止まらない思考
せっかく環境を整えて「せめて5分ぐらいは呼吸に注意を向けるぞ」と意を決しても、1、2分も経過しないうちに思考が騒ぎ出すという経験は、初心者の頃はよくあることだと思います。
それは、人間の脳に備わった習性であると同時に、一定期間かけて自分自身が形成してきた脳の習慣です。脳の病変や脳が覚えてしまったパターンが強固な場合、そのような状態になるのはある意味、仕方がないことです。
「なぜ止まらないか」という無駄な分析
今のコンディションでは仕方がないことなのに、「なぜ止まらないんだろう?」と考えてしまって、ますます思考を強化してしまうということが起きます。
でも、考えてみて「その原因」って答えは出ますか?
そもそも人間の脳の習性、うつ・不安障害などによる脳の病変、自分が身につけてしまった脳の習性なんだと知識があれば、それは「仕方がない」と思えるかもしれませんが、
何もわからないまま、見よう見まねでマインドフルネス瞑想を始めた方の中には、
脳の習性をそれを知らないまま、なぜなぜ?とますます思考を膨らませてしまったり、マインドフルネス瞑想のやり方や思考の中断の仕方をそもそも習ったことがないのですから、原因と疑いようもなく、頭を抱えてしまったりもします。
「あってるのか・間違っているのか」という評価
そして、思うように座って呼吸に集中する時間が伸びていかないと、やがて湧き上がってくるのが「自分のやり方ってあってるの?」という疑念です。
このような思考に陥ってしまう人は、
・今、自分が何をしようとしているか
・今、自分が何をしているか
がわからないまま、実践して、評価しようとしていないかといないか気になります。
実際には、本を読んだり、動画や音源を聞いてやってみた後に、よくわからないけど、「とりあえずやってみよう!」と、経験をもとに試行錯誤していくことも必要です。
ですが、「あっているか・間違っているのか」(錯誤)で終わるのではなく、どうしたらマインドフルネスの核心(上記の定義)に近づけるか振り返ることも必要です。
しかし、振り返りという作業は、1人ではなかなかできないものなのです。
私は、効果的なのは、誰かと経験について話していくことだと感じています。
また、正しいのか、誤っているのかという評価もマインドフルネスの核心からはかけ離れた態度と言えるのではないかと思います。
全ての場面ではないまでも「評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観る態度」とはどういう態度なのかを念頭に置いて、あっているのか・間違っているのかという評価を少し保留して自分を洞察してみるようにしてみませんか?
自分はできていないという評価
5分、10分と時間数が伸びてきましたが、いつまでも「自分はできていないのでは?」という評価を繰り返す方もいます。
マインドフルネスや自己洞察のスキルを向上させるという観点に立つと、結果を振り返ることも必要です
ただし「できたか、できなかったか」という評価の「できなかった」という側の評価ばかりを条件反射的に繰り返していても、実践はポジティブなものにはなりにくく「苦行」となっていきます。
「できていない」という目線で自分を見ていて、「明日もやろう」「自分の症状をよくしていくために取り組もう」という気持ちになりましたか?
足し算ではなく引き算のスキルアップ!?
自己洞察瞑想療法のスタートアップの時期には、なかなかうまくいかないお客様も多くいらっしゃるのですが、私は、こう考えて欲しいと思っています。
何かを加えていくのではなく、何かを減らしていく練習をすることであると。
ところが私たちは、学校や職場でも、自分を評価して、自分に足りないことを身につける「足し算」のスキルアップはイメージできても、
個人差はありますが、一旦身につけてしまった自分に対しての評価や分析という習慣を簡単にやめられない人も一定数はいらっしゃると思います。
うつ・不安障害に陥る方の多くに、この傾向は見られます。
不要な自己評価や自己分析をやめる
建設的な自己評価や自己分析は必要ですが、自分を病気に至らしめるような自己評価や自己分析は必要ですか?
自己評価や自己分析の結果、自分を否定的に評価したり、自分の欠点ばかりを探してみて、あなたの症状は軽くなりましたか?
もし、つらい症状に変化がない、あるいは悪化していると感じているなら、自分への不要な評価や分析はやめてみませんか?
そのためには、自分が今まさに評価的思考や分析的思考に陥る瞬間や、思考に浸っていたということに可能な限り早期に気づいて思考を中断しましょう。
呼吸法・マインドフルネス瞑想や自己洞察のトレーニングはそれらを実現する手段の1つです。
できたかできなかったかよりも実は大事なこと
トレーニングを指導していて思うことなのですが「できたか、できなかった」よりも大事なことが3つあります。
「課題を思い出せたかどうか」
その1つはは、うつ・不安障害を治すために呼吸法・マインドフルネス瞑想ほかのトレーニングを「思い出せたかどうか」です。
自己洞察瞑想療法では、(自己洞察瞑想・マインドフルネス瞑想・安静時自己洞察)や行動時自己洞察は、日々少しずつでもやることが必須課題です。
しかし、それが自分にとって大事だと思っていても、やるのを忘れていたというのは「課題保持ができていない」状態と言えます。
やったかやらなかったか、できたかできなかったかはさておき、「課題を思い出したか」は、課題の着手を大きく左右します。
「やろうとしたかどうか」
「呼吸法をやらなくちゃなー」と課題を思い出せたとします。
しかし「今日は体調悪いし」「何だかめんどうだな」「やりたくない」という気持ちは、少なからず起きます。
それらを自己洞察瞑想療法では、否定する必要はありません。自然なものとして観察します。
やったかやらなかったかは別として「やろうとしたか」、つまりそのような意志を起こしたかということも大事です。
何らかの理由はあっても「やろうとしたけどできなかった」という状態も「やろうともしなかった」よりは「マシ」な状態と考えます。
そして、この「マシ」な状態を、次の好ましい状態に近づけていきます。
「やろうとしてやっているかどうか」
次の好ましい状態は「やろうとしてできた」状態を考えてしまう方も多いかと思うのですが、私は、その前に「やろうとしてやっている」という状態が1つあるかなと感じています。
つまり、「できたか」どうかではなく「やっているか」どうかなのです。
できたかどうかという評価の前に、「やっている」という事実をしっかり観ます。
率直に言うなら、マインドフルネスは「今、ここ」に十分注意を向けていることなので、「今、ここ」で、トレーニングを実践していることにこそ価値があります。
すぐに「できたかできなかったか」に囚われる方もいますが、脳が非習慣的な課題を達成するには、個人差はあれど時間がかかるのです。
それを、ちょっと練習したぐらいですぐにできるとか、1、2回やってみたけどできなかったから私には無理と簡単に判断してしまうのは、脳神経生理学についての知識が不足しています。
私たちの脳は、全ての課題に対して、スイッチを入れてすぐに結果が出せるようなものではないのです。
「やったかどうか」
それでも、できた・できなかったという評価が立ち上がってきて、自分が重苦しい気持ちになったとしたら、それでも何度も何度もやろうとしてやってください。
こう書いてしまうと何だか「力技」でやっているような感じに聞こえますが、お客様によってはこの状態になる方も何割かいらっしゃいます。
しかし「力技」になっている時、どこかに修正ポイントがあります。
私には、そのようなお客様には、マインドフルネスの実践には役に立たない態度や勘違い、思い違いが観察できます。
それらが、ただ呼吸をしながら自分を観察するだけのトレーニングなのに、余計な力を使わせているのです。
そこをどう乗り越えていくか、早く見つけることができた方は、グーンと実践効果が上がっていきまます。
ということで長々と書き連ねましたが、
まとめ
自己洞察瞑想療法でマインドフルネスのトレーニングをする際には、マインドフルネスの定義の「評価」を保留し、できたかできなかったかに囚われるのを減らしてきましょう。
できたかできかったかよりも、やろうという課題を念頭に置き、やろうとしている、やっている、やったかの方が大事です。
それでもうまくできないという評価に捉われている場合は、すでに身につけてしまったマインドフルネスの実践には役に立たない態度や勘違い、思い違いなどがありますので、早めに修正しましょう。
では、また次回。