呼吸法の実践、自分のペースに乗せて行くのは最初の方はむずかしいなぁと感じるかもしれません。
そこでよく聞く「集中できない」というフレーズ。
他の瞑想法や呼吸法と比べて、目指すところが違えば、方法も異なります。
実は、自己洞察瞑想療法では、何か1つの事に集中することは目指していません。
(なので、ひとつのことに集中できなくても大丈夫なんです!)
私たちの日常生活、職場での仕事は、刻々と状況が変化していきます。関わる人も変化します。
したがって、同時に様々なことに注意を向ける必要があります。
例えば、
電話対応をしながら、顧客情報をコンピュータで検索したり、
日報を記入しながら、上司の動きを目で追いながら報告・連絡・相談のタイミングを見計らったり、
2つのガスコンロで、種類の違う料理を同時並行で作ったり、
常に変化する環境の中で、1つのことだけに集中(=没頭)していると作業や仕事に支障を来すことがあります。
ですから、自己洞察瞑想法の呼吸法では、注意は分配させることが基本になっています。
うつ・不安障害を治すマインドフルネス―ひとりでできる「自己洞察瞑想療法」(26ページ参照)
例えば、私は、呼吸法のトレーニングを当時、電車の中で行っていましたので、
電車の警笛や開くドアの音、学生たちの話す声、座席の前の方の顔、窓の外で移り変わって行く景色を目で追ったり、耳で聞いたり、自分の感情や思考などの作用など注意が及ぶものに次から次へと注意を移して行く練習をしていました。
ただ、大事なのは、注意・意識が及んだ物事に対して、評価をしないことです。
例えば「あー、もー、うるさいな」とか、「あの人、なんで眉間にしわが寄ってるんだろう?」といった「頭の中のおしゃべり(思考)」に注意します。
ただ、私たちには長年慣れ親しんできた私たち固有の反応があります。なので、「うるさい」「なんで○○なの?」「あ、桜の花がきれい」ととっさに頭に浮かぶことはは往々にして起きるのですが、
「あー、私は今、うるさいと感じているんだな」「あー、私は、前の座席に座る人の眉間のしわが気になっているんだな」「桜の花が気になったんだな」ということだけわかったら、それ以上のおしゃべりが生まれない、つまり深入りしないことにします。
自己洞察瞑想療法では、目を開いて行います。
私は、真っ白な壁に向って呼吸法をするより、電車の中や、街の中、公園などで行うことがしばしばありました。
寒い時期に向いますが、もしかしたら静かだけど少し「変化のある環境」でやってみるのもひとつの方法かもしれません。