先送りされる未完了の人間関係の問題をマインドフルネスの実践ではどう扱うのか?(2)

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トレーナーの羽利です。

前回は、マインドフルネスが集中力を高めて、仕事の成果を手にする上で、決して侮れない先送りしている人間関係の問題について書きました。

今回は、ではその冷静ではいられない人間関係の中で、どのようにマインドフルネスを実践していくかについて書いていきたいと思います。

マインドフルネスの実践ではまずどうしているのか?

人間関係の中でとっさに感じる不快感を助長させない

この問題を、マインドフルネスの実践法である自己洞察瞑想法ではどのように解決していくのでしょうか?

マインドフルネスでは相手ではなく、自分に注意を向け、自分の「感覚・感情・思考・行動」に気づきます。

「あー、嫌だなぁ」「うわー、また嫌なこと言われるんだろうな」「どうせ逆ギレされるんだろうな」などのつぶやきが頭の中に広がったとしても、

「私はそんな風に思っているんだ、感じているんだ」ということにただ気づきます。

そして、気づいたら、もう次の瞬間、先ほど頭の中に広がったつぶやきの内容(感情や思考)は過去のことになっています。

すでに過去になった不快なことを蒸し返し、さらに助長することは、「今、ここ」ではなく、タイムマシーンに乗って「過去」を生きていることと言えましょう。

この不快感に巻き込まれないように、「今、ここ」で自分がやろうとしている行動を思い出して、注意を向け変え、集中します。
それが行動中のマインドフルネスの実践です。

相手の言葉をあるがまま聞く

マインドフルネスでは、「あるがまま」に物事を受け取る練習をします。

例えば、あなたが「上司のパワハラに耐えられない」とします。

相手とのパワーバランスがあまりに異なる場合には、相手の前でなす術もなく、我慢を選ぶということもあると思います。
(私も経験してるんですよ・・・)

パワーハラスメントを受けてきた光景がトラウマになって想起されたり、恐怖や嫌悪など繰り返し繰り返し起きる感情が自覚し、一時的にやり過ごすことができたとしても、抑圧することで、大なり小なりの葛藤が生じます。

パワーハラスメントの場合、上司側に問題があることももちろんありますが、何か言われている時の、非言語の声のトーンや表情への嫌悪に翻弄されて、言っている内容が「あるがまま」聞くことができていなかったりするのであれば、私たちにも少し工夫が必要です。

もし、上司から何か問われていることがあるとしたら、相手が求められていることを答えていますか?

もし、上司が自分に対して決めつけていることがあれば、「違います」ということももできませんか?

しかし、実際には「こう言ったら、こう言われるんだろうな・・・」と、勝手にタイムマシーンに乗って、相手の反応を予測し、当たるか外れるかを「どうせ当たる」と決めていることに気づきます。

そのようなことは、自分にとって不快なことから自分を守る「リスクマネジメント法」として、私たちは慣れ親しんでいます。
(だって、あえて地雷踏まなくてもいいよね・・・的な)

しかし、求められていることにも答えずに、「違います」とも言わないと、あなたがパワハラを働いていると感じている相手は、あなたに対しの思い込みや決めつけを強化してしまいがちです。

上司に毅然とする態度をとるというのは勇気が必要です(もちろん遠慮なく言える人もいます)。

でも、実は、

部下に従来と異なる態度を取られると、戸惑われる上司の方、傷ついている上司の方も多く、そうやって、上司も学んでいくのですよ。
(管理職研修にて)

徒然と書いてしまいましたが、あるがままに聞けないと、次なる対処行動のスタートに立つことができなくなります。

コミュニケーションの問題は、どちらか一方に問題があるのではなく、2人の関係の中で起きる問題です。

自分が我慢すれば丸く収まるから泣き寝入りも、時と場合によります。
いつも同じ対処法を繰り返していることに気づいて少しでも工夫をしていきます。

相手に対しての理想は幻想と知る

例えば、家庭でも職場でも相手に何か要望しても、自分の思っているように動いてくれずにイライラしてしまうことがあるとします。

「私だったら、人から言われたらやるけどな」「言われる前に気づいてやってほしいな」などという自分基準を相手に当てはめると、相手を「評価」したり「裁き」のモードに入りがちです。

そして「気が利かない人」「鈍感な人」「使えない人」などレッテル貼りをしてしまったりします。
そうなると、その人との関係は面倒なものになり、コミュニケーションを回避することにもなりがちです。

どうしても相手に思うように動いてほしい時は、相手の譲歩を引き出す質問やリクエストに建設的なひと工夫が必要になります。
(あなたが譲歩することも含めます)

相手は、何らかの理由で、あなたの要望に十分な注意を向けられないだけかもしれません。
自分の中にある相手への「評価」「判断」を一旦保留し、相手をマインドフルにただ見ます。

そこから、もう1度、冷静に「今、ここ」でお互いに「いい感じ」になる対処方法を選びます。

自分の思う通りに進めたいという支配の欲求は、無意識のレベルで相手にも伝わっていき、支配する側よりもしぶしぶ従う側にストレスとなります。

相手とより良い関係を作っていく上で、自分の支配欲求に気づいていることが大事です。
気づいていればやめることもできるのです。

「気にしない」の前に「気づいている」

不快なことばかりに気を取られてしまう人に「気にしなければいいんだよ」というアドバイスをしても、なかなか届かない場合があります。

言われた方も「そうできればそうしたいと」思っているかもしれませんね。

マインドフルネスの実践は、「気にしない練習」ではありません。
むしろ「気づく練習」と言えるでしょう。

「気にしていることに気づいてやめる練習」です。

この練習をしていくうちに、次第に気にしていたことが気にならなくなるというのが、実際のマインドフルネスの実践の中で自然と起こることです。

「気にしなくなりたい」に囚われるよりも、「気づいて、手放す」あるいは「気づいて、建設的に対処する」という行動を続けていくと、これまで自分の不快に感じていた人間関係への対処の習慣が変わっていきます。

現実に合わなくなってしまった自分の習慣を非習慣的なやり方に変えていく中で、現実対応できる習慣を学びとっていくことができます。

マインドフルネスの実践は、成長するための「学習法」とも言えるのではないでしょうか。
そうして、不都合と思われるような問題から1つ1つ自分を知り、学び、成長していきます。

悩ましい出来事に出会っている時は成長のチャンスですね。
マインドフルネスの実践がその手助けになるものであってほしいと日々思っています。

  • この記事を書いた人

羽利 泉(はりいずみ)

石川県金沢市でカウンセリングや「うつ・不安障害を治すマインドフルネスーひとりでできる自己洞察瞑想療法ー」の講座をしたり情報を発信している公認心理師(国家資格)・マインドフルネス瞑想療法士です。マインドフルネスの実践を通し、心身症状で悩む方のサポートをしています。