トレーナーの羽利です。
今日は、自己洞察瞑想療法が、再発の防止にあたって、他のマインドフルネスの実践を伴う心理療法とどう違うのかについて書きたいと思います。
欧米のマインドフルネス心理療法
マインドフルネスの実践を伴う心理療法には、複数ありますが、日本に紹介され、医療の中で取り入れられている代表的な心理療法が
・MBSR((Mindfulness Based Stress Reduction):マインドフルネスストレス低減法
・MBCT(Mindfulness-Based Cognitive Therapy):マインドフルネス認知療法
です。
端的に言うと、前者は、ストレスを減らすこと、後者は認知療法にマインドフルネスの実践を組み込み、再発まで防止できることがわかっています。
いずれもアメリカ・イギリスで開発され、効果が確認され、治療やその他のプログラムへと応用されています。
その他には「ACT(Acceptance and commitment therapy)」や「DBT(Dialectical Behavior Therapy)」なども知られています。
自己洞察瞑想療法の特徴
自己洞察瞑想療法を実践してみようとご相談にいらっしゃるクライアントさんに、私が早い段階で説明しているのは、自己洞察瞑想療法10ヶ月間の大きな課題の傾向です。
私自身は、自分がトレーニングをしていた時には、毎月毎月のセッションの内容を理解し、実践するのに精一杯で、全体像が見ていませんでした。
しかし、今、こうしてクライアントさんのサポートをしている中で、言えることは、
前半は「症状の軽減」、後半は「仏教哲学を拠り所にしながら、苦しみを生む考え方に気づき、修正していく」という大まかな方向性があると言えます。
自己洞察瞑想療法は、先に紹介した「MBSR」と「MBCT」のコンセプトやプロセスが、共通点と相違点を持ちつつも、幾分、統合されたようなものと考えられます。
再発防止を狙うには、前半だけでは、少しづつ症状は和らげることはできたとしても、つらくなる考え方までは、修正することはできず、
後半だけ機能させようと思っても、前半部分の積み上げが乏しいと、心身の症状に振り回されているうちは、より深く自分を知って、自分の習慣を改善していくというプロセスに辛抱強くあることができません。
脳のコンディションが十分ではなく、自分を学ぶには妨げにあることが多く起きるからです。
統合された考え方や実践が必要なのです。
そして、自己洞察瞑想療法の特徴の中でも、忘れてはいけない特筆すべき点は、「日本人によって開発され、日本人によって効果が確認されてきた」ということです。
うつ病は再発する病気である
罹患された方には、物憂いデータとなるかもしれませんが、2008年、一般社団法人うつ病の予防・治療日本委員会が発表したデータによると、
初めてうつ病になった方の次回再発率は50パーセント、2回目の場合75パーセント、3回目の場合は90パーセント
1回で完治したという方は、2人に1人であり、再度罹患なさるとそこから抜け出せるのは、4人に1人、10人に1人と 再発のたびに、再発率が上がるということです。
しかも、完治と言っても発症する前の症状がなかった頃に完全に戻れるかと言うと、何かしらの後遺症が残ると言われています。
確かに、トラウマのような心理的な症状は大なり小なり残るかもしれません。
薬ではつらくなる考え方や習慣までは変えられない
当センターには、
精神科や心療内科に通い、服薬しながら通っていらっしゃる方いる一方で、薬は飲まなくてもよくなったけど、あいかわらず、眠りが浅い、不安やイライラが続くという方も通っていらっしゃいます。
薬がいらなくなったとしても、身体症状や精神症状を引き起こす考え方についての理解と修正を放置したままだと、つらい状態は再び訪れます。
そうでなくとも、再び訪れるのではないかという不安が残り続ける方もいらっしゃるかもしれません。
薬では、症状を鎮めることはできても、つらくなる考え方や考え方に気づき、その考え方に無意識に結びついた習慣までは修正することはできないからです。
自己洞察瞑想療法がやっていることはまさに、つらい症状を鎮め、つらくなる考え方や習慣を修正していくことです。
自己洞察瞑想療法は、終わってからも数年は再発の可能性があるという前提で、セッションで学んだことを継続することをお勧めしています。
それは、10セッション完遂した方も継続の必要性を明言していますし、一般的にはお医者様での治療に通わなくて済むようになったとしても、1年くらいは再発には気をつけるべき時期と考えられており、
薬物治療が中心だった方は、特に精神療法やカウンセリングなどを受けることが勧められています。
面と向かって自分に向き合うことも
再発を防ぐには、再び窮地に立っても、切り抜けられる自分への確固たる信頼が必要です。
自分を心底、信頼するできるかどうかは、「自分自身をどれくらい学んでいるか」がカギになります。
自分の弱いところだけを分析したり管理するのではなく、
自分が何を願っているのか、自分にはどんな特徴があるのか、自分にはどんな資源があるのか、自分はどんな時にイキイキとできるのか、そういったことを棚卸ししていく作業も必要です。
私たちは、本来、もっと「生きる力」を備え、発揮することができます。
そのことを知らないことも苦しみを引き起こします。
自己洞察瞑想療法は、禅仏教と西洋哲学を統合した「西田哲学」が、哲学書を読まずとも、まずは実践できるような形でプログラム化されたものです。
禅仏教も西田哲学も、症状が厳しい時は、詳しく踏み込みづらいかもしれませんが、生命についてたくさんの示唆を与えてくれるものです。
気持ちや時間に余裕のある時に、ふと手にしてみると、残りの人生をより骨太に生きていく、あるいは深めていく上で、指針となることを見つけられる方もいらっしゃるかと思います。
個人的には、宗教や哲学との出会いは、ただ単に理解の対象に止めるのではなく、鵜呑みにするのでもなく、そこから自分らしく、自分で考えていくことの始まりとも思えます。
いろんな可能性を秘めた自己洞察瞑想療法で、再発しないだけでなく、より味わい深い人生を送られますよう、私も継続して、学び、実践していきたいと思っています。