自己洞察瞑想療法を知る

認知行動療法としての自己洞察瞑想療法と学習理論|自己洞察瞑想療法の前提

私は、自己洞察瞑想療法は、なかなか治らなかったうつや不安障害、あるいは類似する症状の方々が第8〜10セッションまで継続することができれば、なんらかの手応えを感じることができると感じています。

その前提となる条件は、「この精神療法の意図することを明確に焦点として、継続して実践する」ということです。

今回は、この精神療法が意図することの中でもとても大切なことを書いていきます。

心理療法とカウンセリング

心理療法とは

心理療法(精神療法)とは、精神症状の改善や人格の変容を目指すものです。

心理学分野では心理療法、医学分野では精神療法と呼び方が定着しています。

心理療法とはではどのようなものなのでしょうか?
インターネット上の脳科学辞典から引用させていただきます。

心理療法とは、特定の訓練を積んだ専門家(臨床心理士など)によって、心理的諸問題を抱える患者やクライエントと呼ばれる人の、認知・行動・感情・身体感覚に変化を起こさせ、症状や問題行動を消去もしくは軽減することをめざす社会的相互作用である。個人を対象として行われることが多いが、集団を対象に行われることもある。介入は、特定の理論モデルに依拠して行われる。代表的なモデルに、精神分析療法クライエント中心療法認知行動療法がある。

一方、私たちにとって、聴き馴染みのあるカウンセリングとはどう違うのでしょうか?

カウンセリングとは

カウンセリングとは、ざっくり言うと、主に、言葉によるコミュニケーションを中心にして心のトラブルを解決するものとなります。

カウンセリングが機能するのは主には「相談」です。

その他にも、暴力行為、引きこもり、心身症、神経症などの領域についててもカウンセリングは機能します。

私にももちろん経験があるのですが、信頼できるカウンセラーに、話を受容してもらったり、共感してもらえると、自分の胸のうちを素直に開示することができたり、自分に向き合うことができ、自分の問題が整理されていきます。

カウンセラーに安心し、信頼することができると感じることができれば、助言を聞き入れることもできることでしょう。

心に深刻な問題を抱える場合は

心理療法は、深刻な症状を抱える方々が対象になります。

具体的には、心身症、神経症、パーソナリティ障害、うつ病、統合失調症などです。

それぞれの症状にうまく機能する心理療法、それぞれの心理療法家が経験を積み、強みとする心理療法があるかと思いますので、最初はカウンセリングを受けてみて、助言を得ると良いでしょう。

大きな心理療法の流れとしては、1)精神分析的心理療法 2)認知行動療法 3)来談者中心療法 などがあります。

北陸マインドフルネスセンターでは、2)認知行動療法の流れを汲む「自己洞察瞑想療法」を受けることができ、うつ病、不安障害または類似する症状を抱えている方々がトレーニングを受けています。

認知行動療法とは

認知行動療法といっても多様なアプローチがあります。
臨床心理学概論 野島一彦 岡村達也編 遠見書房 76ー77ページから引用させていただきますと

行動療法、応用行動分析、論理療法(論理情動行動療法)、認知療法、問題解決療法、ストレス免疫訓練、生活技能訓練(Social Skill Training:SST,社会的スキル訓練)、スキーマ療法、第一プロトコル、マインドフルネス認知療法、弁証論的行動療法、アクセプタンス&コミットセラピー、行動活性化、メタ認知療法などがある。

などがあり、大きな3つの流れがあります。

1)行動論的アプローチ
2)認知論的アプローチ
3)マインドフルネスとアクセプタンスのアプローチ

です。

自己洞察瞑想療法はどのアプローチか?

自己洞察瞑想療法は、上記の3)マインドフルネスとアクセプタンスアプローチであると同時に、

実際の実践方法は1)行動論的アプローチも色濃いものです。

このような前提をトレーニングを受ける方に知っていたただけているか否かで、トレーニング効果は随分変わってくるというのが支援している側の実際です。

行動論的アプローチの前提は「学習理論」

私たちは、日々、様々な情報を処理しながら生きています。

見たり、聞いたり、感覚受容器を通して得られる情報や、わけもなく情動が沸き起こったり、ふとなんらかの記憶を想起したりしたりして、それらを脳が認知し、私たちは感情や身体反応、行動などのなんらかの反応をします。

そして、ある刺激に対して特定の反応を継続的に取り続けた経験の結果、身につける経験や行動があり、やがて、それらが反射的に起きるようになります。

これらの反応についてよく知られているのがパブロフの犬の実験です。

パブロフの犬の実験は、メトロノームの音を聞かせると同時に餌を出す(そして唾液が出る)ことを繰り返していると、メトロノームの音を聞いただけで唾液を出すようになるという結果を引き起こすという実験です。

実は、私たちは、日常生活の中で、良くも悪くも、なんらかの経験を通して比較的永続的な行動が変容することがあります。このことを心理学では学習と呼びます。

学習というと、幼い頃から、主には学校を中心に行ってきた「勉強」のいうイメージが強いと思いますが、心理学での学習というのはそういうことではないということを知っておいてくださいね。

自ら苦しみを産むことも学習する

私たちの人生は、よくも悪くも学習の連続です。

好ましい学習は、変化する環境に自分を適応させ、自分を成長させることができる一方で、自分をつらくしてしまう学習もあります。

例えば、幼少期に、親に大きい声で叱られることを度々経験をしたという人が何人かいたとします。

その時に、考えたこと、湧いてきた感情、身体に起きる反応、結果的にとった行動は人それぞれ異なるかもしれません。

・大きい声=怖い、生理学的反射として体が凍りつく(フリーズする)

・「この人には反抗できない」「どうせ何を言っても聞いてもらえない」「親を選ぶことはできない」「将来はこんな親にはならないぞ」と思考すること

・話を聞いてもらえない悲しみ、一方的に悪いことをしたと決めつけられた理不尽さ、悔しさ、憎しみという感情

・自分の部屋に籠もって親から距離をとる、自分からは口を聞かないという行動 などなど。

他にもあるかもしれませんが、繰り返し経験したことが生得的、条件反射的に自分の「パターン(習慣)」として定着し、

それが親だけではなく、しかも、今、自分は幼少期でもないのに、大きな声で叱責する他者であっても同様のパターン(習慣)を持ってしまう、こういうことは自分を探求すれば誰しも多少なりとも見つかることですね。

感じてもいい、思ってもいい、考えてもいい、しかし・・・

自己洞察瞑想療法では、こう考えます。

大きい声に反応して、怖いと思ったり、身が縮むのは、自然なこと(必然)であること

「この人には反抗できない」「どうせ何を言っても聞いてもらえない」「親を選ぶことはできない」「将来はこんな親にはならないぞ」と考えることも、今の自分には自然なこと(必然)であること

話を聞いてもらえなかった悲しみ、一方的に悪いことをしたと決めつけられた理不尽さ、悔しさ、憎しみという感情が湧いてくるのも自然なこと(必然)であること

しかし、自分の部屋に籠もって親(他者)から距離をとる、自分からは口を聞かないという行動 などなどの行動は、あなたや周囲を幸せにする上で役に立つ行動なのだろうかということは検討する余地があると考えます。

つまり、制御不能の身体反応や、とっさに湧き上がる感情には過剰に反応せず、長年積み重ねて今すぐ変えるのが難しい思考は、無理矢理変えようとは操作しようとせず、中断を試みるに止めます。


まずは変えるのは「行動」と考えるのです。

「今、ここ」から現実に対応できる行動に

しかし、長期間かけて積み上げてきた自分や他人を苦しめる思考を中断したり、行動のパターンを今すぐ変えることは難しい場合もあります。

そこで脳が学習してしまったパターンを、まずは自分自身が自覚し、それを消去する学習(脱学習)し、あなたや周囲を幸せにする行動を学習(再学習)することが大事と考える行動論的(行動主義的)な考え方が、自己洞察瞑想療法にはあります。

脱学習し、再学習するトレーニングです。

テキストの中の用語を使うなら、価値崩壊パターンを解消し、価値実現パターンを身につけていくということなのです。

自己洞察瞑想療法に取り組まれる方は、このことをしっかり押えておかれると、自分がやっていることの意味がわかると思うのです。

考え方は、思考を中断できるようになるとやがて変えられる

自己洞察瞑想療法は、認知行動療法の流れを汲んでおり、行動論的なアプローチが顕著ですが、認知論的(考え方のクセを修正する)アプローチがないかというとそういう訳ではありません。

ただ、意図的にそれを行うことを大事にしている訳ではありません。

トレーニングによって症状が良くなっていく、多くのクライアントは「思考は中断でき、コントロールすることができる」と学習できた時、現実に対応できる建設的な思考の下地ができて、自分の認知の歪み(受け止め方や考え方のクセ)を修正し、やがて自然に「熟考できる」という思考態度に変わっていきます。

トレーニングを重ねてもなかなか症状が良くならないクライアントの中には制御不能の身体反応や情動を変えようとしたり、自動的に反芻する思考を嫌い「考えないこと=善、考えること=悪」と判断し、さらに苦悩を強化する方がいます。

ぜひ、トレーニングを始める前に、そんなことをしても症状が良くならないということを知識として理解し、腹落ちさせてください。

精神症状によって、それがなかなか理解できない、理解できても実践に移せないということも起きます。

しかし、何度も思い出してください。「何度も思い出す」ということで、まずは脳を再教育していけばいいのです。

自分で苦悩を解消する技:自己洞察スキルを体得する

うつ・不安障害の方にとっては、自己洞察瞑想療法で、自分の症状が治るかどうかはとても気になるところだと思います

あくまで支援していての所感レベルで書きますが、自己洞察瞑想療法で症状を治していくためには、症状が治るか治らないかという二択の思考に囚われているうちは、なかなか症状がよくなったという実感は得られないと思います。

なぜならば、症状に一喜一憂することが多く、中でも「憂」の方向:落ち込みが長く続けば、心身・行動へのストレス反応も続くからです。

しかし、苦悩を解消し、自分が価値ある行動に注意を向け実践していくための「自己洞察スキル」をマスターすることが症状を改善していく早道と考えられるとどうなるでしょう?

そして、「自己洞察」は常時完璧にできるものではなく、長期的に習熟、上達させていくものであるとわかれば、症状などにいちいち反応しなくなるのです。

行動することは、大脳の前頭前のの活性につながります。

自己洞察瞑想療法で、うつ・不安障害が治るしくみを理解し、効果の出るトレーニングを期間を決めて集中してトレーニングすることで、今までにない変化を手にすることもできるでしょう。

ポイント

自己洞察瞑想療法は言葉のやりとりで心の問題を解決するカウンセリングではありません。
あなたにとってストレスになっている出来事に対しての受け止め方や、思考、情動・感情、行動に気づき、無理のない今できる最善の対処を積み重ねていいくことで症状を改善していく心理療法です。

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