呼吸法を実践していく過程で手放していくこと

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NHKスペシャル「キラーストレス」やNHKEテレ「サイエンスZERO」で、「マインドフルネス」が取り上げられて以来、当センターへのアクセス数はとても増えています。

自己洞察瞑想療法(SIMT)へのお問い合わせも多くいただいているのですが、大半の方は「自分にできるかどうか」が気になることだと思います。

特に、うつや不安障害などで苦しんでいる方は、「治したいけど、自分には無理かも」という思いが根底に見え隠れしているように感じられます。

お問い合わせに対応しながら、マインドフルネス瞑想である「自己洞察瞑想療法(SIMT)」の呼吸法を身につけていくには秘訣がある、

とトレーナーとして感じていることを今回は書いてみたいと思います。

やり方が正しいか誤っているかどうかばかり気にしない

当センターで扱っている「自己洞察瞑想療法(SIMT)」も、マインドフルネス瞑想の実践です。

1ヶ月、2ヶ月と練習していくうちにテレビで紹介されていたようなストレス低減の効果が少しづつ現れ、

習慣として定着した方の中には、半年ほど経過すると開始時より症状が緩和したと実感できることが増えてくるのではないでしょうか。

一方、率直に言えば、うつや不安障害の真っ只中にいる方の中には、苦労される方、挫折しそうになる方、挫折される方がいらっしゃるのも事実です。

その場合に頻繁に聞かれるのは「このやり方であっていますか?」という言葉です。

一方で、比較的スムーズにマスターしていく方の特徴としては、
「あっているかはわからないけど、とりあえず続けていれば、だんだん良くなるだろう」という考え方があります。

もちろん大きな方向性の中で体得していただきたいやり方があるのですが、私たちは、機械ではなく、異なる人生を歩んできた生身の人間であるがゆえ、理解や体得のスピードや質に違いがあります。

まずは、急がずに。

静かな時間を過ごせるようになるスピードに「違い」はあっても「良し」「悪し」はありません。
時間はかかっても、経験と振り返りを繰り返すことで、最終的にはできるようになると考えています。

そして、私たちの呼吸は、日常生活においては極めて不規則です。
瞑想している時、寝ている時、走っている時、仕事をしている時など、同じではありません。

その時その時に適した呼吸のパターンを、脳が「自動的」に調整し、選んでいます。

その一方で、呼吸は「意図的」に行うこともできる生理作用です。
「意図的」に呼吸をするというのは、「自動的」に行う呼吸とは基本的に異なる脳の領域を用いることになります。

また自己洞察瞑想療法の呼吸法で常時、日常生活を送るわけではありません(ただし、役に立つ場面は大いにあります)。

ですから、自分にとって「これで完璧!」という確信を持てずとも、まずは自分につきまとう「正誤」という二分化した思考を止めて、まずは意図的に「観察しながら呼吸」を始めていきます。

次第に、身体を通して「教わったこと、本に書いてあったことってこういうことかな」という経験が増えてきます。

自分の経験上、脳はじわじわと変わり続けていき、ある時に閃きに似た何かを手にする時が訪れるように感じています。

体験の中から学んでいくこと

「知識を理解してからじゃないとできない」というのは、「学生」が試験で合格点を取るような学習法です。

この記事を読んでくださっている方の大半が「成人」の方と推測します。
「成人」が、行動や考え方を変えるプロセスには「体験(行動・実践)」が必要です。

呼吸法という直接的な体験を、よりよくできるようにするには、与えられている情報の中で、十分に活かせていないことはないだろうかと点検してみることや

よりよくできるように環境や条件を整えていくことには「たった1つの正解」などなく「自分にとっての最適」を見つけていく工夫や辛抱強さが必要になるかもしれません。

「こんな風にやったらどうだろう」「こうやってみたらどうなるか試してみよう」と、うまくいかなくても工夫して選択肢を増やしていくことは人生全体においても共通です。

トレーナーは、助言もしますが、皆さん自身がアイデアを出し、「選択肢」を増やしていくためのサポートをします。

「AかBか」「YESかNOか」の二択の考え方を手放して

マインドフルネス瞑想で行われる観察時の「ラベルづけ」については、「自己洞察瞑想療法(SIMT)」でも中核のスキルですが、多くの方がそのようなことをするのは初めてです。

ですから、最初から、教えられた通りにできなくても、テキストに書いてある通りにできなくても、これは「練習」を通して体得していくものだと理解して欲しいのです。

ましてや、まだまだ扁桃体の興奮が鎮まらない状況で、マインドフル瞑想を始めようとする方はとても苦労されます。
(もしかしたら、今はまだ始める時ではないという方もいるかもしれませんし、別の療法の方があっているという場合もあると思います)

「練習」とは、できなかったことをできるようにしていく「プロセス:過程」そのもので、
治したい、苦しみから逃れたいというのは「目標:ゴール」です。

マインドフルネスの実践は、すべてが「プロセス:過程」です。

「目標:ゴール」の達成を急げば急ぐほど、現状と「目標:ゴール」のギャップに落胆し、自分を評価し、場合によっては自罰的思考(自分は何をやってもダメだという思考、やっぱり自分は良くならない問いう思考)に陥ることがあるかもしれません。

このまま続けて「良くなるのか」「良くならないのか」という短期的な判断も、「過程:プロセス」の実践への注意力を奪います。

「AかBか」「YESかNOか」の二択の考え方は特に症状からの回復やストレス低減の支障になります。

急がずに、そこにとどまって「今ここ」で自分の呼吸と自分の内外で起きていることに「意図的」に注意を払い観察することが脳のしばらくお休みしている部位の活性を促進していき、結果として「苦しみ」を減らすことにつながっていきます。

徐々に、10分、20分とまとまった静寂な時間を作っていけたらいいですね。

どんな時も「かけがえのない自分」を信じて、自分を罰したりしないで。

  • この記事を書いた人

羽利 泉(はりいずみ)

石川県金沢市でカウンセリングや「うつ・不安障害を治すマインドフルネスーひとりでできる自己洞察瞑想療法ー」の講座をしたり情報を発信している公認心理師(国家資格)・マインドフルネス瞑想療法士です。マインドフルネスの実践を通し、心身症状で悩む方のサポートをしています。